第14章 マイ・ガール ※R-18
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「恋仲になったきっかけは?」
「向こうがしつこく言い寄ってきて……初めは鬱陶しいなって思ってたんだけど、だんだん惹かれてったの。私と付き合ってから女遊びもやめてくれて……」
「想いが深い証拠だわ〜!お人柄は?」
「いっつも穏やかで、私が何しても絶対怒らないの。人望も厚くて輪の中心にいるような人……かな。剣術も全国一だったんだよ」
「やだっ、素敵ー!そのような素敵な方と何故離れてしまったのです?」
「………。流石にそれは事情があって言えないんだけど………将来はその人と一緒になろうって決めてたんだ。大好きだったなぁ………」
未だ続く会話が漏れている桜子の部屋の前で、
俺はただ静かに手にしていた生姜湯の湯気を見つめ立ち尽くしていた
聴きたくないのに、
早く立ち去りたいのに、
蜘蛛の糸に捕らわれたように板張りの床から足が動かなかったんだ。
人徳があり
人柄も良いうえに
文武両道
ついでに見てくれも良い
ーーー非の打ち所無ぇじゃねーか。
何をしても絶対怒らない?
ーーー俺はそんな広い心の持ち主ではない。
そして
将来の見通しを立てる程
本気で惚れていた、か……………
桜子、それ以上語るな。
仕舞ったばかりの嫉妬が襲ってきて目眩がする
暫くそのまま放心していたが、女共の話題が桜子から逸れた事に気付き
やっと動くようになった足でその場を後にし、外に面した障子を開け湯呑みごと地面に投げ捨てた。
佐助の部屋へは戻らなかった。