第4章 『旋風』
「ふぅっ、ちょっと休憩しよっと」
控え目に鳴らしていた音楽を止め、広い庭から縁側に移動し腰を下ろすと上半身を後ろに倒し寝そべった。
大学で入っているストリートダンスサークルでのイベントへ向けて練習していたのだが、次ワームホールがいつ開くのかはまだ分からないらしく、もしかしたらイベ参加は無理かもなぁと落胆した。
「はぁ…………っていうか…………」
素朴な疑問。
今は一体、何時なんだ?
スマホには真夜中の時間が表示されている。タイムスリップの際にズレが生じたのだろうか。
「あっ、そこのお兄さん!ちょっと待った」
昨日宴にいた家臣の一人が通り掛かったので、取っ捕まえて時計は無いのか訪ねた。
「機械式時計は南蛮から譲り受けてる者もおられるようですが、ここにはございませんね。砂時計や水時計はありますが…………大体は大陽や月の位置を見れば検討つきますでしょう?必要無いかと。」
いやいやいや。
そんな原始的な。
大陽は今、南中にあるので昼頃だそうだ。
さっき朝餉を食べたばかりなのでアレ?と思ったが、確か昔の人は一日二食の生活だとテレビで視た事がある。
遅い時間に一回、夜に一回というサイクルで摂っているのだろう。
「では、私は案件や書簡を持っていかねばなりませんので失礼いたします」
「ごめんね引き留めて。ありがとね~!」
(そっか。仕事の用で来てたんだ)
謙信、信玄、幸村は政務や軍議があるからと広間に籠っている。
戦国武将は戦うだけではなくお役所仕事のような事もしているんだよ、と佐助が言っていたっけ。
「なんか大変だなー皆。」
日の心地よさで眠気に襲われ、ふわぁ、とあくびをすると私はいつのまにか夢の世界へ意識が飛んでいた。