第13章 リーサル・ウェポン
ーーーーーーーーーーーー
軒先に吊るされた風鈴には泳ぐ金魚が描かれ
ちりりん、と涼しげに鳴る。
炎天下の手合わせで体力が奪われた桜子と幸村は縁側で肩を並べて寝転んでいた。
「なんか、落ち着くね」
「そーだな」
体は疲れているが汗をかいた後の爽快感で気分は良好。
隣で横になっている桜子は前髪を上にあげ一つで括り、風鈴を眺めている。一見、阿呆の子みたいな髪型だが可愛く見えるのは惚れた欲目だろうか。
顔を少しでも動かせば、ちょんまげがピョコンと揺れる。
それが面白くてつついたり引っ張ったりしていると、口を尖らせた桜子が揃いの髪型にしようと企み俺の前髪を狙って手を出してきた。
避けても避けても狙ってくる。
このじゃれ合いすら幸せに感じていた、そんな最中
「微笑ましい光景だなぁ。若いって良いねぇ」
盆を手にした信玄様がにっこりと見下ろしていたので慌てて起き上がった。
「し…信玄様!これは、あの……」
「なーに照れてるんだか。それよりもほら、汗かいた後だし塩分でも摂れ」
置かれた盆に乗っている皿には、
大根、胡瓜、茄子、蕪など多種類の漬物があり
桜子は真っ先にひと切れ摘み、パリパリと小気味の良い音をたてて咀嚼した。
「こらっ、まずは礼を言ってから食え!……すみません、信玄様」
「ははっ、いいんだよ。食いしん坊で可愛いなぁ天女は」
ハッとして済まなそうに礼をする桜子の頭を優しく撫でる信玄様。
……………
…………あ、なんだか嫉妬心が…………
若干、靄々としかけた時
通り掛かった女中から、謙信様と佐助が所用から戻ってきた旨を聞いた桜子が「出迎えに行ってくる」と玄関の方へ走って行った。
その後ろ姿が消えていったのを見計らった信玄様が、俺を肘で小突いてきた
「なぁ、天女とはどこまでいってるんだ?」