第13章 リーサル・ウェポン
「何って……汗拭くだけだけど」
「外でそんな格好してんじゃねぇ!」
「そんな格好……?ああ、これ?大丈夫だよ。大事なとこは隠れてんじゃん。それにあっちぃし」
あっけらかんと言うと、はらりと脱ぎ捨て仁王立ちで豪快に身体を拭き出した。
………全っ然大丈夫じゃない。
脱いだ下に現れた、桜子が着ているそれーーー。
聞けば、“たんくとっぷ”と“たんぱん”という現代の着物らしい。
肩と二の腕、そして太腿が丸出しだ。
卑猥にしか見えない。
そういえば最初に会った時も脚を晒していた。
五百年後の人間の観念は一体どうなってるんだ?
と、目が釘付けになりながらも後の世を憂いていると
ふいに桜子が俺の露わになっている上半身を様々な角度からジロジロと観察し、背後に回り込んだ
「あっ………幸、凄ぉい………」
…………!?
「凄い、良い………」
なんだ………?
音声だけだとあらぬ想像をしてしまいそうだ。
硬直して振り向けなかった。
すると、そいつはひょこっと横からこちらを覗き瞳を輝かせた。
「良い感じで発達してるね!幸の僧帽筋」
は………?
「そーぼーきん?」
「うん。首の後ろ辺りから肩や肩甲骨に向かって広がってる筋肉でね………」
…………紛らわしい声出しやがって。
俺が呆気に取られているのを余所に、桜子は嬉々として筋肉について語る。
すると
「外腹斜筋も綺麗……いいなぁ……」
すっ……と指先で脇腹をなぞり、うっとりした眼差しを注いできた。
……………………
触れられている箇所から疼きが湧き上がり理性が崩壊しそうになる。
そーぼーきん、やら がいふくしゃきん、の説明は右から左へ耳を抜けていく。
本人は筋肉の事しか頭に無いだろうが俺は脳内で欲望と闘っているのだ。
桜子の首筋から汗が胸の谷間へ流れていくのを見下ろす幸村の喉がゴクリと鳴った
…………ああ、何て表せばいいのか
そう、こいつはまるでーーー
欲望に負けそうになった自分の手が
そっと桜子の両肩を掴んだ