第13章 リーサル・ウェポン
七月・文月
日差しが照りつけて、立っているだけでも肌にジリジリと熱を感じ汗が滲む。
本格的に夏の陽気だーーー。
そんななか
鍛錬場に響く、竹刀を打ち合う音。
「わっ……」
力一杯放った一振りを幸村に避けられ、桜子は体勢を崩し前のめりによろめいた。
地面に倒れるより先に、大きな手がその身体を支えた
「……っぶねぇな」
間一髪だ。だが、
彼女は俺の腕に寄りかかったまま俯き微動だにしない。
ああ、これはまた………
様子を伺っていると、地面の砂に雫がポタ、と落下した
ーーー予感は的中。またベソかいてやがる。
「手合わせで負けたくらいで泣くなって〜」
「……だって嫌だもん、負けるの」
「相手は俺なんだからいいじゃねーか」
「幸にも負けたくない」
………こいつの負けず嫌いは相当なものだ。
先月の夏祭りの日にやっと想いが通じ合い恋仲になったというのに、その俺にすら負けたくないと言い張る。
剣術どころか筋肉まで鍛える稀有な女だ。
「ほら、いつまでもぐずってねぇで顔洗いに行くぞ。汗もすげーし」
鼻水をすすり不貞腐れる桜子を井戸まで連れて行き、汲んだ水を桶に張り手拭いを浸して絞り顔を拭いてやった。
ちっこい顔だな………というか頭部自体が小さい。脳みそはちゃんと入っているんだろうか。
なんて思ってると、冷たい感触が心地良かったのか桜子の表情に明るさが戻ってきた。
まったく手の掛かる奴だ。
自分も汗だくだった顔や身体を冷やしたいと、着物の合わせを引っ張り上半身を脱いでもう一枚用意していた手拭いで拭き始めた。
が。
その傍らで、
外した帯をぽい、と投げ
何食わぬ顔で着物を全て脱ごうとする桜子に、
木刀で脳天を殴打されたかのような衝撃を受けた。
「なっ……何やってんだお前は!」