第4章 『旋風』
「あー、もう。自分の服着てくからいーよ」
バサッと襦袢を脱ぎ捨て鞄の中を漁る。
「なりません。あのような奇天烈なものなど」
……………ぷち。
しつこいにも程がある。
苛々が頂点まで差し掛かかりそうになり、丁度手元にあった服を掴むと廊下へ走り出した。
「きゃああっ!その身なりで出てはなりません!!」
口に手を当てて驚くも直ぐさま追いかけて来る佳世を尻目に、走りながら服を被った。
(あ、これ昨日のタンクだ。………まぁいっか)
「まぁーた騒いでんのかよ、あいつ」
「仕方ないさ、現代では日常で着物を着る人は少ないんだ。手間取るもんだよ」
屋敷の奥の一室ではいつもの面々が食事を始めていた。
たぶんまた支度が遅れるだろうと踏んだ佳世が、先に摂っておいてくれと根回ししていたのだ。
遠くから聞こえる二人の叫び声と足音がだんだん迫ってくる。
「ここかぁーっ!」
桜子の声と共にパッシィーン!と勢いよく障子が開いたので、一同がそちらに注目する。
「うるせーな、朝から……………」
振り向きざまに幸村は口にしていた味噌汁をブッと吐き出した。
「ほう」
「なんだ、あれは」
パッと笑む信玄と表情を崩さぬ謙信。佐助は絶句していた。
上はタンクトップだが下はパンツ一枚というあられもない姿で飛び込んできた桜子がいたからだ。
「桜子さんっ、マズイよその格好はっ…………」
「ボクサーパンツだから平気」
仁王立ちで腰に手を当ててふんぞり返る。
(どーいう理屈だ!布の面積の問題か!?)
顔を赤らめて佐助がアタフタしていると、佳世が肩で息をしながら鬼の形相で入ってきた。
「桜子様っ!いい加減にして下さいませ!」
「うっせー、ババアっ!しつけーんだよ!」
「バ………………」
ピキ、と眉が吊り上がり口元を歪ませた佳世は、すぅー………と大きく息を吸った。