第10章 『永劫』
輿に垂れている簾を捲ると、
胡座を掻き
両腕を上げ後頭部で指を組んだ、
お世辞にも上品とは言えない桜子がそこにいた。
「……お前なぁ、またそんな格好で……上等な白無垢が台無しじゃねーか。………………折角、綺麗なのに」
強めだった語気が語尾には小さくなり、
自分が発した言葉に照れてしまったのか
ほんのり赤く染まった幸村の顔を見た桜子は
くすり、と笑った
「だぁって、ずっと正座してたら疲れたんだもん。こっちのが楽だし。大丈夫、輿から出たら上手くやるからさ」
白い着物は僅かに着崩れ、
白い打掛は皺になり、
白い綿帽子は斜めにずれている。
当の本人は肩をすくめおどけて舌を出す。
出逢った頃と変わらない、飾らない彼女。
そんなとこが、ずっと好きだった。
勿論、今も。
「まぁ、お前らしーや」
ふ、と愛しげに柔らかい笑みを浮かべた幸村は
生涯の伴侶となる桜子に手を差し伸べた
しっかりと重なったその手から………
二人の未来は、紡がれていく
一人目の主人公編・完