第10章 『永劫』
そしてその後、渋る謙信様を説得して
早々に真田家の迎え役のところまで行き彼等が述べる口上を聞き……
私の首元には
道中の安全を祈願する懸守が掛けられ………
白い草履を履いて
玄関を出ていき………
門火が焚かれた城門までやって来た。
くるりと振り返り、城を見詰める
「……………」
澄みきった青空を背景にそびえ建つのは、
蜂ヶ峰の山頂に築かれ広大な敷地を持ち地形を巧みに利用した天然の要塞
難攻不落と言われる、春日山城ーーー。
気が付けば、この城に住み始めてから一年以上が経っていた。
逃げ出した事もある。
しかし帰る所はここだけだった。
ーーーーーー私の第二の実家。
さあ、ここから新しい人生を歩き出そう。
南から吹く暖かな春風を浴び
桜子は前を向くと裾を手で持ち上げ静かに輿の中へ入っていった