第10章 『永劫』
そうしてとうとう、
城の入り口に着き…………
各々がドカドカと中へ入っていくのを、私は立ち止まったまま眺めていた。
その様子を疑問に感じたのか、段差のある板張りの上から幸が首を傾げていた。
「………?何してんだ、早く入れ」
「なんか、緊張しちゃって………」
今朝、もう訪れる事はないだろうと腹に決めて出て行ったはずの春日山城に一日も経たず帰れるとは思ってもみなかった。
奥からは数人の女中達が嬉しそうに飛んで来た
「桜子様、ご無事で……!どうぞこれに!」
渡されたのは自室の衣桁に残した、普段着ていた着物ーーー。
「桜子、お帰り」
「……ただいま」
綻んだ表情の幸に返事をすると、
私はスニーカーを脱ぎ、春日山城の敷居を跨いだ…………。
「来い」
板上に踏み入れると、幸が私の空いている方の手を握って廊下へ歩み出す。
“人前で手なんか繋げるか”ーーー
そう頑なだった彼は、今こうして平然とやってのけている。
あの頃の本人の意地を張った顔付きが脳裏に浮かんで、なんだか可笑しくて笑ってしまった。
「ふふ………」
「……なに笑ってんだよ」
「ん?なんでもなーい」
「言え」
「やだ。」
そうやって他愛も無い言い合いをしながら歩く二人は、確かに幸せを感じていた