第10章 『永劫』
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戦闘の場と化した盆地では既に事態は終息していた。
頭を無くし精彩を欠いた盗賊団は、あの後も劣勢のまま総崩れとなりーーー
結果、上杉・武田軍の勝利に終わっていたのだった。
現場では後処理作業が進められ、組織の実態を解明する為息のある装束兵達を城へ連行する事になった。
「謙信様!信玄様!佐助ー!」
到着し馬から降りた桜子は天幕にいる三人のところまで手を大きく振り走っていった。
「おい、転ぶなよ!……ったく」
戦場は危険なのでまずは城へ送る予定だったが、いち早く皆に会いたいと言い張リ譲らない桜子に負け、結局連れてきてしまった幸村は溜め息を漏らしながらも、天幕で再会を喜ぶ四人の様子に目尻を下げた。
「皆……迷惑かけてごめんなさい」
一通り状況を説明した後、桜子が申し訳無さそうに下げた頭に信玄がポン、と手を置いた
「気に病むんじゃない。ただ……次に城を出て行く時は、白無垢姿でな」
「信玄様……」
にこやかに笑みをこぼす信玄の横から佐助が口を開く
「桜子さんが無事で良かった。一時はどうなるかと思ったよ」
「佐助……。……あのね、資料の事なんだけど……」
「ああ、大丈夫。内容は全部俺の頭の中に入ってるから心配しないで」
自分のこめかみをトントン、と弾き
尚も謝る桜子を制していた。
その佐助の後ろで黙っている謙信に目が行き、声を掛けようとしたが幸村が先にずい、と一歩前に出た。
「謙信様に直接何の断りも無く戦から抜け出してすみませんでした。将としてあるまじき愚行です。……罰は、受ける覚悟です」
「………もう良い」
「しかし………」
「お前は敵方の頭から見事戦利品を獲って来た。故に今回の件は帳消しにしてやる」
その謙信の言葉に、幸村は無言で深々と頭を垂れた。