第10章 『永劫』
「ん………っ」
…………………
「桜子は悪くない」
一旦離してそう言うと、
すぐにまた塞がれひとしきり啄まれ………
のちに止むと
下瞼に浮かぶ涙を指の関節で拭ってくれた。
「桜子は、何も悪くない。………それぞれが己の心を蝕む邪なものに負けた………それだけだ」
私の両手を取ると優しくさすり、
目線を再度こちらにやった
「信玄様も、謙信様も、佐助も………皆待ってる。お前を責める奴なんか一人も居ねぇよ」
「……皆、待って、る……?」
「おー。………だから、現代に帰るとか抜かすな」
「………私……」
「俺にはお前しかいない。行くな」
「……………」
「俺の幸せ壊すんじゃねーよ、馬鹿」
………
…………
……………幸……………!
せっかく拭ってくれた涙が堪らず出てしまい、あとからあとからついてくる。
「………っ」
私は堰を切ったように飛び付くと、二人一緒に後ろに倒れ…………
顔を上げると、下敷きになった幸の微笑みが近くにあった
そして、
どちらからともなく…………
何度目か定かではない、口付けをした
自分の唇とは対象的に、幸のそれはとても温かかった。
直接触れている部分だけではなく、内側から………心の芯から温められている………そんな感じがした
おもむろに幸の口元にある乾いた血の跡をそっ、と触る。
………さっき、殴られたんだよね
ましてや戦場から駆け付けてまで私を助けに来てくれた
「………ごめんね」