第10章 『永劫』
鼓膜をつんざく地鳴りや強風はピタリと止まり、
眩い光は消滅しーーーーーー
渦となっていた黒雲は役目は果たしたとばかりに徐々に解け、各方面へ散っていき
切れ目から日差しが覗いた。
薄暗かった空は雲が退けてく度に明るさを帯び………
まるで絵の具で塗り潰したような、濃い青みを含んだ水色が冴え渡った
時化ていた海は鎮まり、安穏な空気が流れていたーーーーーー
「………帰ったんだな、現代に」
「うん………」
浜辺に座り、一部始終を目に焼き付けていた二人は静かに言葉を交わし始め
幸村は抱いていた桜子の肩を引き寄せ自分の胸元に納めた。
城の部屋にあった彼女の着物と同様の愛しい香りがふわりと鼻から入り心身が安堵に浸る
「間に合って、良かった………。もしあのまま会えずに離ればなれになってたら死ぬ程後悔してたんだろうな……」
「うん………」
「俺さ、…………あっ、お前怪我してんじゃねーか!」
至るところにある様々な傷に気が付いた幸が慌てて手拭いを出し一番痛々しいふくらはぎの患部に当てた。
布地を肌に沿ってぐるっと巻いていく指を見つめながら、私は今後の身の振り方について躊躇していた
「………幸、あのね………」
「なした?」
「来てくれて凄く嬉しかった。私も、幸に会えないまま現代に帰ってたらきっと悔いが残ってた………でも……でもね」
じわりと涙腺が緩む。
「私のせいで皆に迷惑をかけて………合わせる顔が無いの。犠牲になった人だって居る………私がこの時代に生きてるせいで………。私、ここに居ちゃいけないんじゃないか、って思う………二ヶ月後に本能寺で起きるワームホールで、帰った方が良いんじゃないか、って」
俯いて瞬きをすると雫が数滴、落下した。
応急処置を済ませた幸村は、「やっぱり、現代に……」と話し続ける桜子の腕を掴み、冷たい唇を塞いだ