第9章 『狂愛』
鼓動がやけに五月蝿く感じる………
喉が引きつって、
息が、上手く吸えない
ーーー瞳に宿った二人の男
敗れし者は、地に伏せる。
それは、避けられない
私がこの時代に来た事によって幕を開けた、
それぞれの愛と憎しみが複雑に絡み、もつれた、激動の人間模様…………
その全ては私に繋がっている
私に深く関わった、
二人のうちどちらかがその身にきっと取り返しのつかない傷を負うーーーーーー
どちらかが……………
どちら、か が……………、
……………………………………
桜子は足の縄を解き、
ぐらつく膝に力を込め立ち上がると
ふらふらと覚束ない足取りで歩き出した
一点だけを見つめて。