第9章 『狂愛』
……………
「だ……駄目、やめて……」
私はこの二人の力量を身をもって知っている
ーーーやり合えば只では済まないーーー
「お願いだから、やめて!」
危機感を募らせた桜子は是が非でも止めなければならないと懸命に藻掻いていたが、ふっと思いもよらず光太郎の足元に身体を置かれた
「ちょーっと待ってろよ、桜子。………すぐに片を付けてくるから………」
横たわった状態の桜子にふわりと笑みを送ると、瞬時に鋭い目つきに変貌しサク、サク…、と砂を踏み幸村の方へ歩み寄っていく。
「待って……待って!」
一定の距離を保ったところで歩みを止めると本差の刀の鍔を指で押し出した
「……やっぱあんたという牙城を崩さないと先には行けないみたいだね。最初に潰しとけば良かったよ」
「それはこっちの台詞だ」
鯉口を切ったままの光太郎、
柄を握ったまま構える幸村
目線がぶつかり合いーーー
………………………
暫しの沈黙の後
間合いを取っていた互いの足が、
同時に前へ飛び出した
「やめてぇぇーーー!」