第9章 『狂愛』
「高校生のガキが“結婚しよう”なんつってな。……でも本気だったんだ」
…………そうだね、私も…………
「今も気持ちは変わってない。いつか夫婦になって二人で暮らして子供もいて………いいな、そーいうの」
…………、
「ずっと一緒にいような」
私の頭に頬を擦り寄せる彼に、
やはり返事が出来ずにいた
ーーー過去の思い出はいくらでも浮かんでくるのに
どうしても未来は浮かんでこないの
あの人が居ないから
頑固で
照れ屋で
優しいあの人が。
幸、
貴方がいないと未来も描けない
空虚で冷えていた瞳に
熱いものが溢れてくる
「わ……たし……」
そう言いかけた時
光太郎の肩が跳ねた
疑問に思い見ると穏やかだった表情が一変、
険しくなりどこかに視線をやっていた
「………懲りない奴だね、あいつも。………まぁ、俺もなんだけど」
舌打ちすると身体の向きを変え
ある方向を睨んでいた