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【イケメン戦国】戦国舞花録

第9章 『狂愛』




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蹄が濡れた地表を蹴っていく。
手綱を握る掌に、力が漲る



向かい風と雨に打たれながら幸村は、戦場を後にする前に交わしたやり取りを胸に刻み北西方面へと邁進していた




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『志乃が………!?』
『ああ。何者かに斬られ命からがら山中を彷徨っていたらしい…今救護天幕で手当を受けさせている』


………………


すぐにでも行きたい。
しかし……


『ですが信玄様、俺はここを離れる訳には……』
『勝利が間近とはいえうわの空で泣き面を見せる奴は要らん』
『…………』


『行け。ただしこんな特例はこれっきりだ。二度目は無い』


厳しい口調とは裏腹に
信玄様は温かみのある笑顔を、していた


『幸、この機を逃して謙信様に首斬り飛ばされても知らないよ。急いで』


付近で敵を往なしている佐助からそう言われ
遠方で刀を乱舞させている謙信様の後ろ姿を見据えた




ーーー後押ししてくれている

それぞれが、

桜子と自分の行く末を案じてーーー




『……信玄様』


出立する間際の宣言を、
もう一度己に言い聞かせるかの如く。


『桜子は俺が必ず連れて帰ります』


返事の代わりに片手を上げ翻して行った広い背中に会釈をし、荒野から出たーーー





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その皆の後押しを経て、
こうして脇目も振らず馬を疾駆させている。


無駄には出来ない。


北西ーーーこの先にあるのはーーー





ーーー海











天候は荒れに荒れ
木の葉や草はしなり
視界は最悪。


だけどはっきりと見えるんだ


桜子へと繋がる道筋が



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