第9章 『狂愛』
ぽつん、ぽつん、
と雫が当たる感触を感じていると
小雨が静かに降り出した
鎧の上を止めどなく水が滑走し馬の足元に滴り
槍の刃に付着した血は流されていく
荒れ果てた地を見渡せば
敵の数は残り僅か。
成果は上々。
でも
桜子が、居ない
以前、あいつと大喧嘩した際に
現代に帰れと失言しかけた
心根にはそんな感情微塵も無い癖に。
そして今回もまた性懲りも無くーーー
ーーーあの時はただ、許せなくて………………
許せなくて………………
だけど
「行くな!!!!」
天を仰ぎ
腹の底から
声を、張り上げる
雨風が強まり、
幸村の髪が煽られ
見上げたままの顔には横殴りの雨が打たれていた
出会った日に思ったんだ。
ーーー嵐のような女だと。
嵐のように現れてーーー
今、
この吹き荒れる嵐と共に去っていくというのか
朱色の十文字槍が手から、
離れた