第9章 『狂愛』
声と同時に
女の利き腕に後方から小太刀が貫通した
「ああああ!!」
グラリと傾いていきうずくまるその脇には、
憎悪に満ちた面持ちの光太郎が佇んでいた
一瞬の出来事に硬直している私を捉えた後、視線が女の方へ動いていく
「桜子に何した」
刺さったままの小太刀を女の腕から抜くとそこから血液が溢れ断末魔のような悲鳴が響いた
「やっ………」
桜子はその姿に耐え切れず目を瞑り
背けた
「何した、って聞いてんだよ」
足蹴りしているのか、殴っているのか………どちらともつかない打撃音と苦しげに漏れる女の声が、
何度も何度も、耳に入る
「もうやめて!やめてよぉ………っ!」
懇願するが、
止む気配は無い
聞いているだけでも胸が悪くなり限界だった
「桜子、桜子」
どの位経ったのかーーー
時間にすると僅かだろうが、とても長く感じていたそんな中
ふいに呼ばれ瞑っていた目を開けるが、
再び閉じたくなるような凄惨な光景が飛び込んできた
顔面は腫れ上がりーーーあらぬ方向に曲がった四肢の女ーーー
心臓には小太刀が刺さっていた
「…ひ……………っ!!!」
がくがくと身震いが襲う
声帯が枯渇したかのように叫びすら出てこない
胃液が逆流するのを抑えるのが精一杯だった
「桜子、大丈夫だ………ほら、もう動かないし喋りもしない。安心しろ…………な?」
返り血を浴びたその顔はとても穏やかでーーー
ーーーーーーーーー狂っていた