第9章 『狂愛』
どうしてこんな事をされているのか理解できない
ーーーただ、とてつもない殺意だけは伝わってくる
うつ伏せの姿勢で引きずられ続け、
なんとか地面から顔を浮かせ障害物に当たらないようにしていた
元いた場からだいぶ距離が空いていく
「ーーー………いや、そうじゃないなぁ………」
女はブツブツと呟き立ち止まると
正面に建つ古い小屋の戸を蹴り開け
入っていく。
と、桜子の胸倉を鷲掴み、中にある柱に打ち付けた
「っ!!」
ガツン、と側頭部に衝撃を受け
崩れるように床に倒れ込んだはずみで
帯がずり落ち口元が開放され
痛みを堪えていたのも束の間、
「あたしが直々に殺す」
そう禍々しい雰囲気を醸し出した女が振った刀を桜子は転がりながらギリギリで避けていく。
「ふーん。反射神経は良いんだ。」
「ちょっと……!やめてよ!一体私が何したっていう………」
「自覚無い訳!?」
攻撃の手を止め声を荒げるとギロリと桜子を睨みつけた
「あんたのせいで起きた戦であたし等組織はもうお終いだ!あんたが現れてからコウの様子がおかしくなった……あたし等を見捨ててまであんたと逃げるなんて………」
「………やっぱりあなた光太郎と同じ仲間の………」
「あんたに関わった人間は皆災いに苛まれる………全部あんたのせいだ………」
スゥ、と刀を高く上げる
桜子は己から脂汗が吹き出るのを感じていた
角に追いやられ、最早逃げ場は無い。
ああ、
殺されるんだ
ーーー私は初めて“死”を覚悟した。
「死ね!!」
女がそう刀身を降ろそうとするや否やーーーーーー
「死ぬのはてめぇだろ」