第9章 『狂愛』
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ーーー戦場では、猛攻する上杉・武田軍の優勢へと推移していた
「……まずい……予測を上回る勢いだ……!」
「早々にお頭に指示を仰ぎに行け!」
常々最前線で指導していた頭が今回不在という異例の事態により幹部達だけでは統制が困難になりつつあった。
一団内で混乱が生じていた
「このまま押し出せーーー!」
味方の兵がここぞとばかりに攻め込んで行き、
謙信や信玄、佐助等も敵を次々と薙ぎ払っていく。
「てんで息が合ってねぇじゃねーか。こっちはとっとと終いにしてぇんだ、寝てろ」
幸村はそう鬼気迫る形相で槍を振り翳し周囲の敵の束を一気に叩き伏せた
(…………“あいつ”は何処にいるんだ………?)
面前に蔓延するのは舞い上がった砂埃と、飛び交う矢や砲撃、罵声、呻き声
入り乱れる義侠の士と、黒く邪な凶賊。
この集団は全員覆面をしているが、どれもあの男ではない。
二度に渡って交戦した故、太刀捌きを見ればすぐに解る。
あれ程卓越した腕前の奴はここには居ない。
ーーー何故、居ない!?
好戦的なあの男がーーー
(なにしてんだ、早く出て来い……………!!)
先の戦での雪辱を果たしーーー
桜子を取り戻す。
幸村は馬の腹部に足を当て、
敵の陣地へ疾走していった
ゆっくりと、雲の流れが微かに変化し始める
ゆっくり、ゆっくりと……………………………………