第9章 『狂愛』
どんよりと曇った空に
ふわふわと、白い輪が上がっていく。
戦場から距離の離れた大木の太い枝に腰掛けている光太郎は口から煙を吐きゆったりと戦況を眺めていた
「コウ」
木の根元に立つ、
同じ装束を着た女が眉をひそめ頭上に声を掛ける
「あんたこんな所で何やってんの?幹部に現場仕切らせっきりじゃない」
「………策があんだよ。お前等は黙って俺の指示に従えば良い」
カッとなった女は幹を蹴りつけた
「あんた最近おかしいよ!だいたい急な召集かけて金にもならないこんな戦いするなんて………っ!仲間が皆あんたに逆らえないのを良い事に好き勝手しないでよ!………あの女まで攫ってきてどういうつもり!?あいつと会ってからあんた変わった!」
「おい」
滑り落ちるように伝い降りて来た光太郎が、
女の首を片手で締めた
「ぐっ………」
「てめぇはいつから俺に意見する立場になったんだ?」
無機質な瞳に射抜かれ
背筋が凍てつきゾワゾワと毛が逆立つ
「何度か寝たぐらいで俺の女気取りか?勘違いしてんじゃねーぞ、糞女」
ぐぐぐ、と圧迫されていく
「………った、分かったよ、言う通りにするか………ら………っ………」
「………………」
投げ捨てるように突き放すと、
体をくの字に曲げ喉を押さえる女を数秒見下ろし
くるりと踵を返して行った
息も絶え絶えに倒れていた女は、
冷えた土を爪で掻き悶えていた
「殺してやる…………あの女………」
何遍も何遍も
血が滲むまで、掻きむしっていた