第9章 『狂愛』
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春日山から安土方面へと通じる山道ーーー
敵方の行動を偵察している斥候から逐一報告を受けつつ上杉・武田軍は迅速に進行していた
「……………しかし、妙だよな」
「俺も、そう思ってました」
馬を隣に寄せ、そう訝しげに発する信玄に幸村は同調した
「裏では“蜘蛛”と呼ばれその実態すら知る者が限られている程の隠密活動に徹していた奴等が、どういう訳か今回表舞台に躍り出た。………幸、お前に酷似したあの男は顔すら隠していなかったな」
「はい……合点が、いきません」
前回の戦の一件で逃亡していた奴等が何故今更
上杉領内に結集しているのだろうか
目的は何だ?
「………なにやら思惑がありそうだな」
信玄が思慮深く顎をさすっていると、
騎乗した佐助が駆け付け合流した
「桜子さんは未だ発見には至っていません………一体何処に匿われているのか………」
前方で謙信に報せる佐助の言葉が耳に届き、
幸村の心に暗い影を落とす
ああ俺は
あいつに最後なんて言ったんだっけ