第9章 『狂愛』
「これによると、どうやら俺自身の存在がワームホールの引き金みたいなんだよね。理由は教えてくれなかったけど…………他にも細かい調査結果が記載されてるよ。大したもんだなー、佐助君」
「え………?」
「だから要は桜子は俺の傍にいれば近いうちに無事二人で現代に帰れるよってこと。ごめんなこんな汚いところに閉じ込めて…………あ、そうだ」
隠していた小袋をまさぐり、
二つの輪を桜子に見せた
「ほら。実は俺もずっと持ってたんだ」
ーーーそれは、
今朝返した私の指輪とーーー
もうひとつは、一回り大きなーーー
「記憶無くしてる間もなんとなく気になってて保管してた。捨てなくて良かったよ」
そう私の頬を包む優しい表情は昔と同じなのに、どこか狂気を孕んでる気がした
「…………ねぇ…………本当にごめんなさい…………何回も言うようだけど…………私は幸が好きなの。光太郎とは一緒に帰らないの」
「…………桜子、あいつの名前、出さないでくれる?」
光太郎は微笑んだままだ。
「ちゃんと聞いて!私が好きな人は幸だけなの!幸じゃなきゃ……………」
「出すなっつってんだろ!!!」
瞬時に、
噛み付くように口を封じられた
「んうっ………」
頬を掴まれている手の圧力が強くて、痛い
頭を左右に振るが唇は捕らえられて離れない
桜子が身をよじる度に繋がれた鎖がジャラジャラと地面でうねっていた
(苦しい…………!)
「………っ!、はぁっ……!はぁ……」
やっと解放され、
荒い呼吸を繰り返していると
私の左の薬指を無理矢理つまみ上げ、
指輪をはめた
「俺とお前はずっと一緒だ」
そう告げる彼の眼球には
歪んだ自分の顔が映っていた