第9章 『狂愛』
「………よく効いてるみたいだな」
「ああ」
男二人は倒れている桜子の状態を確認し、手足を縄で縛り上げていく。
「女、よくやった。この娘はお前を信頼しきっていたな」
「ふふ、そうねぇ。貴方達のことも本物の兄弟だと信じて疑ってなかったみたいだし」
食べかけの弁当を片付けながら志乃は胸を躍らせていた
ーーー祭で幸村様がこの子を追い掛けて行った時、はらわたが煮える思いだった。
それまで女子に対して積極的になっているところなんて見た事も聞いた事も無かったから………。
幸村様の手前、
この子と仲良い振りをするしかなかった
そうしていたら調子に乗って痴話喧嘩の相談までしてくる始末だ。
………憎かった
でももう大丈夫。
この子は居なくなるんだから。
傷心の幸村様を私が支えてあげる。
「ーーーそれにしても随分上玉じゃねぇか。珍妙なものを着てはいるが…………はぁ、やってみてぇなぁ……」
男の一人が桜子の尻を撫で回し
下品にニヤつく
「馬鹿っ、やめろ。傷を付けずに運んでこいとの命令だ」
「チッ、分かってるって。まぁ頭を怒らせたら命がいくつあっても足りやしねぇしな。……………合図もあったしとっとと行くか」
桜子を抱え、準備をしていると
志乃は上機嫌で指示を仰ぐ
「ねぇ、お次は何をしたらいいかしら?証拠隠蔽なら手伝うわよ」
「……………」
顔を見合わせた男達はプッと吹き出した
「いやぁ、嫉妬に狂った女ほど恐ろしいもんは無ぇな」
スラリと刀を抜き、こちらを差す。
志乃は事態が理解出来ず息を飲んだ
「え………?………」
「お前の役目はここで終わりだ。これも命令されている」
じりじりと近寄ってくる男達から
後ずさりする
「………そんな……今まで協力してきたのに……!………嫌、やめて………!」
「協力者は最後に殺すのが我々の鉄則なんでね」
「いやあああああ!!」
踵を返して駆け出すが間に合うはずもなく、
刃が斜めに振り降ろされた