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【イケメン戦国】戦国舞花録

第9章 『狂愛』



「その方には恋仲の女性がいて………私の出る幕はなさそうなんです」

いつだって笑顔を絶やさない彼女の眉が悲しそうに下がっていて
それを見ているだけで切なくなる

「志乃は女らしくて可愛いし料理も上手いし充分魅力あんだからもっと押せ押せだよ!振り向かせる勢いでさ!」

「桜子さん………」

「ね?頑張って!」

すると志乃の華奢な腕が私を包み
抱き締められた

「嬉しい………」

「友達だもん、応援するよ」

「ありがとうございます。………………私、頑張りますね。貴女が助言してくれた通りに………」

ぎゅうぎゅうと抱き締める力が強くなる

「あはは………志乃、苦しいよー」

「……………………」

「…………志乃?……」

どうしたのだろうと思っていると、
遠くの空に煙が上がっているのが目に映った




あれってもしかして

狼煙ーーー




“戦国時代では通信手段に使われたりするんだ”



そう佐助に教えて貰ったことがあるような………………………………




(…………!)

「う………っ!」

背中に気配を感じた途端、
後ろから伸びてきた手が桜子の口元に布を当てがった

(何………!?)

逃げようとするも志乃に押さえられどうにもならない。





変な…………匂い…………





鼻から入った臭気が脳に伝わりクラリとする。

志乃はがっちりとしがみついたままだった身体を私から離すと、
不敵に笑っていた




「私、貴女が大嫌いだった」




桜子の大きな瞳がより一層拡張する




「私がお慕いしているのは今も幸村様ただ一人。貴女なんかよりずうっと前からね」





(志……乃……)

力が抜け徐々に上体が傾いていき、
仰向けに倒れる

全身が痺れ動かせない



志乃の兄弟等が布を片手に無表情で覗き込んでいる



ああ、視界が薄まっていくーーー



「さようなら」



彼女の柔らかな声色が耳に届いた直後
私の意識はそこで途絶えた


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