第9章 『狂愛』
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「美味しい!これ志乃が作ったの?」
「ええ。料理は得意なんです。気に入って頂けて良かったわ」
敷物を広げ座り、弁当に舌鼓を打つ。
本当は食欲など無かったが、いざ食べてみるとあまりの美味さに箸が進んだ
ふと付近に立つ兄弟を見上げると、
馬に筒から水をやったり撫でたりしているだけで食事を摂らずにいた
無口だが愛想は良く、
動きもしなやかで無駄が無い。体術でもやっているのだろうか。
まじまじと観察していると、横でおかずを取り分けてくれている志乃から問い掛けられた
「何故今日は幸村様は一緒ではないのですか?」
「……え、と………安土に私の知り合いがいてね、幸とは全く関係のない人だし取り敢えず一人旅も楽しそうだし〜って感じで……」
いつかバレるだろうにこうして誤魔化す自分はまだ幸と別れた事を認めたくない証拠だ。なんて滑稽なのか
「そう……ですか。何かあったらいつでもおっしゃって下さいね。ーーーそうだ、私の話も聞いてくれますか?相談があって……」
「うん、いいよ!どうしたの?珍しいね」
こんな状況だけど日頃は私から一方的に悩みを持ちかけている分、ちゃんと聞いてあげなくちゃ。
なんせこの時代で出来た初めての友達なんだから。
「実は私、好きな人がいるんです」
「えっ!ほんとにー!?どんな人なの?」
「男らしくて優しくて……笑顔がとても素敵な方なんです。うちのお店を贔屓によく来てくれるんですよ」
そう頬を染め、はにかむ姿は可愛らしく野花のように可憐で恋する乙女そのものだ。
「………けどーーー」
瞼を伏せ、
表情が曇っていく