第3章 『面影』
「………うん。ありがとう。佐助には感謝してもしきれないよ。見ず知らずの私にここまで色々してくれて………蓮と小梅の事探すのも協力してくれて。ほんと、なんて言ったらいいか………」
「気にしないで。桜子さんは俺と同じ現代仲間なんだし、なんてったって百合さんの友人だ。遠慮しないでこれからも何でも相談して」
「ありがとう…………」
やっぱり佐助は良い人だったんだ。
なのに私ときたら、大声でまくし立てたり脅そうとしたり挙げ句の果てに「人さらい!」なんて。
改めて考えたら私は野垂れ死んでもおかしくない状況だったのに、救ってくれた。
(やべ、また泣きそうだ)
涙をこらえようと上を向いて瞬きしていると、戻ってきた幸村の不機嫌そうな顔が現れ、頬を両側からつねられた。
「変な顔」
彼の謎の行動と言動に一瞬固まった。
(~~~~っ…………なにコイツっ…………)
「あのさ、」
頬から手を放し、佐助と反対側の桜子の隣に座る。
「お前さっきから佐助にだけ呼び捨てだよな。」
「……え~?なにいきなり。だって真田さん達は武将じゃん?ブショー。」
「俺は呼び捨てでいーから。真田さんとか呼ばれたらなんかムズ痒いんだ」
「そうなんだ。んー、じゃあ、幸。でいいのかな?佐助や信玄様もそう呼んでるし」
「………おー。」
「………………」
「………………」
あら………?なにかしら?この空気は………
お互い妙な気恥ずかしさからか、なんともいえぬ間が形成されてしまった。
さぁ、次はどう繋ごうか。
「あー………っと、あ、ほら、謙信様と信玄様に酌してこいよ。」
「あ、わ、分かった」
幸は機転を利かせたつもりだろうが辿々しく言うもんだから私までどもってしまった。
(酌とかやった事ねぇし。どーしよう。しかも相手は武将………)
新たな課題に直面し悶々としながら桜子が立ち去ると、ボソッと佐助が囁いた。
「……………幸にも春が来たね」