第9章 『狂愛』
「っ!」
一気に間合いを詰められ振り下ろされた刀を佐助は受け止めたが、腕が震える
(速い!!重さも半端じゃない………っ)
なんとか弾き、距離を空け身構えた
「……何故この近辺に滞在してるんだ。戦の後お前等一団はかなり遠方まで逃走を図ったはずだ」
「俺さ、自分の御先祖様目の当たりにするの初めてだったんだよ、戦の時。…………一回手合わせしてみてぇなって思ってたから念願が叶って嬉しかったなー。すげぇ似てて驚いたけど」
話を続けながら、足を送り
互いに相手の出方を伺う
「戦ってみて益々興味湧いちゃってさー、一旦仲間から離脱して真田幸村の普段の様子を見にここの領地に入り込んだんだけどまさか桜子に会えるとはね………」
すぅ、と笑みが消え
斬撃を繰り出すと
防御に徹する佐助の刀が湾曲した
「……………!」
衝撃で畳の上に倒れた佐助の首元に、
光太郎の刃の切先が差し向けられピタリと止まる
「………理由は知らねぇけどどうやら俺を現代に戻そうとしているんだろ?そのワームなんちゃらは。だったら桜子を俺の傍にずっと置いておけばいずれは二人で無事帰れる訳だ…………あいつと同じこの時代には居させねぇ」
「……………………」
「あいつは俺から桜子の全てを奪った。心も身体も……………全部」
そう見下ろす形相は凄まじく、
佐助はじわじわと冷や汗が吹き出てくるのを自覚していた
「またてめーか」
襖が開かれると
怒気を帯びた眼がこちらを見据えていた
「幸!」
「噂をすれば御本人登場………か」
幸村は佐助に突き付けられている刃とその主を見つめ、
柄に手を掛けた
「今度は逃さねー」
ふ、と光太郎の口の片端が上がる
「悪いけどこれから桜子を迎えに行かなくちゃなんねぇから見逃してくれないと困るんだよね。……じゃないとあんたのおトモダチこのまま殺すよ?」
「…………………」
動きが止まり躊躇している幸村に佐助が声を荒げる
「俺のことは構うな!こいつを今ここで止めないと取り返しがつかなくなるかもしれない………幸、やれ!!」
…………………………………
幸村は柄を握りつつも刀身を出せずにいた