第9章 『狂愛』
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ある可能性を懸念し
早急に自室へと舞い戻った佐助は、
自分が所持している資料や道具を隠し戸棚から引っ張り出し
入念に調べていた
…………………………………
「……………予感的中、か………」
緻密な計算や調査によってはじき出した結果、
昨日、ワームホールの予兆である現象がとある場所で起こっていた。
ーーー幸村が、謙信・佐助と別れた視察からの帰り道ーーー。
“昨日、俺んとこにも出張ってきやがった”
発生時刻、現場
まさに幸とその男がその場で交戦している最中に起こっていたーーー
そして視察に出発する数日前から近隣で頻発する予兆
視察中に度々桜子さんが会いに行っていたその“昔の男”
(もしやワームホールはその男を狙っている………?)
しかもデータを確認すると、日に日に勢力を増しており油断ならない数値が出ていた。
ーーーだがしかし疑問点がある
何故、戦の際から予兆が始まっているのか。
戦場にその男がいたというのか………?
幸と似た顔をしてる奴が居たらすぐ味方の皆は気付くはずだ。
敵方は全滅。
残るは
覆面をした、あの黒装束の…………………………………
(まさか…………あの一団の中に…………)
奴等は誰もが熟練された動きだった
そういえば桜子さんが過去を語ってくれた時チラリと言っていた、
剣道部だったという元恋人ーーー
全国大会で優勝する程の実力者だと。
(嘘だろ…………)
点と点が結び合っていく。
子孫であるその男が、幸と戦場で長時間接点を持った事により
何らかの力が働いているのだろうか…………………!?
「ワームホールが、そいつを現代に戻そうとしているのか………?」
独り言を漏らしていると
カタッ………
ほんの小さな、物音
「!」
聞き逃さなかった佐助は
頭上目掛けて苦無を投げた
寸前で避け、天井裏にぶら下がる
装束を身につけた人物ーーー
「やべ、見つかっちまったなー」
そう呑気にニッ、と笑うその顔は
親友にとてもよく似ていた
「…………お前は…………!」