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【イケメン戦国】戦国舞花録

第8章 『狡猾』 ※R‐18





走って走って走り抜いてーーー


自分の来た道が正しいのかすら定かじゃないが
二人を止めなければという一心が身体を突き動かしていた

足袋は砂埃にまみれ、
下駄がもどかしい。


(早く止めないとならないのに………っ)


歯を噛み締め
密集した雑木を抜けると








「……………!!」



遠くに見えるのは後ろ姿の幸村と、
その先には頬の辺りから血を流し立ち尽くした光太郎


刀を手にした幸村がゆっくりと前方の相手に向かって歩いてゆく。


(駄目………駄目っ………!)



「やめて!!!」


絶叫しその場まで駆けていく。
途中、片方の下駄が脱げ転がる


「桜子……」


それに気付き振り向いた幸村の胴体にしがみついた


「やめて幸!私が悪いの!私がっ………」

「………そんなんは後から聞くから。まずはこいつに…」

「駄目!光太郎は武器なんか持ってないんだよ?…………丸腰なんだよ!?そんな事したら死んじゃう………!」

「は?なに言ってんだよこいつは今までなぁ………」


ハッとし
先程まで戦っていたその男に目をやる

桜子から死角になるように移動し、
地面に放置されていた鎖を拾い懐に隠し
ニヤリとしていた




(あの野郎………!)

頭に血が昇り飛び掛ろうとするが
桜子に力強く抑えられる

「光太郎、逃げて!早く!!」

「あぁ!?お前なにあいつを庇ってんだよ!離せって!」

幸村が桜子を振り解こうとしていると、
両手を上げ気怠そうに伸びをする光太郎が鼻で笑っていた

「いやー桜子、助かったわ。お前の彼氏恐ぇなー。折角助けてくれたんだし、逃げよっかなー」

身を翻し、木の幹を足で蹴ると軽やかに跳躍し
枝に飛び乗る


「桜子、彼氏と話し終わったらいつもの所に来いよ。待ってる。……続きしよーな」


口の端を上げそう言い残すと
木々の奥へと消えていった





「…………“いつもの”所……?……“続き“って……」


興奮していてこれまで目に留まらなかった桜子の少し乱れた胸元の合わせーーー

みるみるうちに幸村が怪訝な面持ちに変わっていく。


「…………幸…、あの………」


がくがくとする全身の震えを、
私は止められずにいた


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