第8章 『狡猾』 ※R‐18
「泣き止んだか?」
「…………うん。ありがと」
後ろから包まれ髪を撫でられる感触。
光太郎の脚の間ーーー“定位置”に座っている私は、
以前彼が落ち着くと言っていたがそれは自分も同じだと改めて感じていた
『攫いに来た』
吸い寄せられるようにその手を取ってしまった今、
最初に彼と出会い数日間過ごしたこの場所にまたこうして二人で居る
辺りに咲き乱れる花ーーー
一体何という名前なんだろうと、指先でなぞっていた
「…………もう、大丈夫。…」
そう腰を上げようとすると、手首を捕らえられ正面から抱きしめられた
「大丈夫じゃない癖に」
見透かされた言葉に、
収まった涙がまた溢れてくる
「ふふっ……やっばり光太郎にはバレちゃうね」
「当たり前だろ、二年以上も一緒に居たんだ。………たかだか数ヶ月しか付き合ってねぇ奴とは、違う」
「………なんでそこまで知ってるの?」
「色々と、な。……お前なんでよりによってあいつなんだよ」
抱き締める腕の力が強まる
「同じ血筋で同じ顔した奴となんて……」
「………………」
……そうだよね
もし自分が光太郎の立場だったら同じことを思う
私は、好きになってはいけない人を好きになったのだろうか
「やっばり、一緒に帰ろう。………帰ったらもう一度やり直そう」