第8章 『狡猾』 ※R‐18
「あのね……」
意を決して切り出す。
「近々、彼氏が出先から帰ってくるの……だから、もうこんな風に会ったり…出来ない。ごめんね……」
「……………」
伏せられた睫毛が震えている桜子を一瞥すると、光太郎はひと呼吸置いて吹き出した
「シリアス決めてんじゃねーよ!ぷっ……くく、腹痛ぇ………っ」
そう手を叩いて大笑いするさまに私は面食らってしまった。
「なっ!?ひ…人が真面目に言ってんのにっ」
「悪い悪い。あーウケた。…何を気にしてんのか知らねぇけど、そんなの言われなくても分かってるって。彼氏に怒鳴り込まれんのは勘弁だから退散するわ」
「もぅっ、笑い過ぎじゃない!?」
そっか。
私が重く捉えてただけなんだ。
光太郎はこんなにも清々しいし、
気持ち良くけじめがつく。
楽しく懐古する時間はもうお終い。
「……じゃあ、元気でね」
「ああ」
帰路を歩き出し、
距離が離れていく
「……桜子!」
呼び声に振り返る
「もし何かあったらいつでも来いよ。二ヶ月間しか居ねえけど、話くらい聞いてやる」
「…うん!ありがとね!」
ーーーーーーーーー
桜子が林の奥へと消えたのを確認すると、
冷めた顔で座り立膝をついた。
煙草に火を灯す
「……………」