第8章 『狡猾』 ※R‐18
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一日の習い事は早朝から開始で
午前中の朝餉を挟み、正午過ぎに終了する
それから夕餉までの間が明るいうちに外出できる時間だ。
「天女、出掛けるのかい?」
下駄を履こうとした体がビクンと揺れる。
「…はい、ちょっと」
玄関先で信玄に呼び止められ、
桜子は平静を装う
「昨日は夕餉に遅れてごめんなさい。今日は間に合うようにするから」
「いいんだ。気を付けて行っておいで」
「はい」
信玄の普段と変わらない笑みを見てホッとする。
(洞察力に長けてる人だから焦ったけど……何の疑いも無さそうだな)
いや、疑われるようなことはしてない。………けど。
出て行く桜子を眺め信玄は僅かに首を傾げた
(今日は珍しくしっかり化粧をしていたな……髪も整え、耳に飾りまで。…まるで…………)
「……まぁ、いくら考えても杞憂に終わるだろうな」
そう独りごちると
自室へと歩を進めた