第8章 『狡猾』 ※R‐18
「流石に薄ら寒ぃなあ、もう秋だし」
「ーーーここ………」
白い砂浜に
深い碧
夏に、幸に行こうと誘われたけど
二人で訪れるには残酷過ぎて
色々な理由をつけて断った
だって、あなたが眠っているところだと思ったから
「夏になるとよく海に遊びに来たよなぁー。たまぁにクラスの奴等も連れて、バーベキューとかしてさ。桜子は本気で泳いでたし」
「………そうだったね」
横抱きだった状態から、
浜の上に静かに降ろされる
「ーーーそして、俺が現代で最後に見た場所だ。………………まぁ、ここの海じゃないけどな。海は、海だろ」
光太郎はおもむろに腰を降ろし、両脚を開き
立てた自分の膝をポンポンと叩いた
「おいで」
“もう会わない”
早くそう伝えなきゃいけないはずなのに。
記憶と重なる
その仕草と
その言葉は
眼前に広がるこの波のように、私をいとも容易く引きずり込む
取り憑かれたようにふらふらと寄っていくと、
光太郎に背を向ける格好で彼の両脚の間にすっぽり収まるように入り
かつての“定位置”に座った
「あー…………この感じ、久々………すっげぇ落ち着く……」
後ろからぎゅう、と抱き締められ
桜子の肩には顎が乗せられた
「ーーー綺麗になったな」
「え…」
「元から可愛かったけど。綺麗に、なった」
「はは……そうかな。ありがと」
相変わらずストレートだなあ。
恥ずかしげも無くサラッと言えちゃうんだよね。
いつも、ドキッとさせられてた。
「………なぁ」
抱き締める腕が強まる。
「教えてくれねぇか。どうして桜子がこの時代にいるのか、どうやって来たのか…………」
「………私も、聞きたい。なんで光太郎がここに居るのか」
繰り返す波の音を耳にしながら、
ぽつりぽつりと事の顛末を話し始めた