第8章 『狡猾』 ※R‐18
幾日かが過ぎーーー
幸と謙信様が支城へ視察に行く事になり、
共に赴くという佐助から当日の朝急に呼び出された私は大量の書類が散らばった彼の部屋に来ていた
「ワームホールが……?」
「ああ。………何日か前から前兆みたいなものがここ周辺のあちこちで発生してる事がわかったんだ」
「前兆……」
「前に特定した本能寺跡でのワームホールが開くのは確実なんだけど、その前にもう一回現れる可能性がある」
「なんでいきなり…」
「…分からない……遡ってよく調べてみたら、一番強い反応が出たのは前回の戦の時……。しかも戦場でだ。……俺達の周りで何かが起こってるのかもしれない」
(…一体、なにが………恐い)
もしも強制的にタイムスリップしちゃう……なんてなったら……
「とにかく詳しい事が判明したらまた随時知らせるよ。動揺させて、ごめん」
ううん、と左右に首を振っていると
襖を開け不機嫌そうな謙信様が声を掛けてきた
「………佐助、いつまで密談している。早く出発するぞ」
「はい。密談ではなく報告です。すぐ、出ます」
謙信様の後ろに控えている幸が見え、歩み寄る
「……ねぇ、私も行っちゃ駄目?」
「駄目に決まってんだろ。遊びに行くんじゃねーんだから」
(分かってるけど、今はなんとなく幸から離れたくない……)
「長くはならないから、大人しく待ってろよ。な?」
前髪をくしゃくしゃ、と掻き回される
「……うん」
「土産買ってきてやるから。何がいい?食い物か?」
「もぅ……私が食い意地張ってるからって。……まぁ、図星だけど……。じゃあね、お饅頭とー、羊羹とー、煎餅とーあとはー」
「まだあんのかよ……」
ーーー大丈夫。
いつも通りにしてればいい。
焦ったって何も変わらないし
あとは佐助の調査を待ってそれから行動すればいい。
そうして
城には信玄が残り、
幸村と謙信は佐助を共に連れ
出立していったーーー