第8章 『狡猾』 ※R‐18
大木の根元に辿り着くと、
見上げて尻尾を振りながら盛んに吠えている。
「なに?どうしたのー?」
獲物になるような小動物でも居るのだろうか。
疑問に思い駆け寄っていく
尚も吠え続ける村正は、立ち上がり前足を木肌につけ、嬉しそうに飛び跳ねている
(よっぽど美味しそうな鳥でもとまってんのかな……)
そんなことを想像していた、
時。
「………っせぇ〜………」
………………………
聞き慣れた、声
毎日耳にしている。
少し低い気もするけど
確実に本人だ
(あれ………だけど今は城で政務してて………)
桜子が大木の下に到着すると同時に、
真上からガサガサと木の葉の音がした
「おいそこの犬、お前静かにしろよ!せっかく人が昼寝し……………」
……………………………………
勉強疲れで、幻覚でも見えてるのかな
だって
木の上から顔を出したその主は
この時代に居る訳がない
ううん
とうにこの世にいないはずの人だから
「……………桜子…………?」
時が止まったように、互いの視線がぶつかり合う
「……………………光太郎」