第8章 『狡猾』 ※R‐18
今日も宿題の出来が悪い、と佳世さんに怒鳴られた
あの文字を見る度に頭がこんがらがりそう………
だいたい和歌って何なのさ。
「訳分かんねぇーー!!」
勉強の合間の休憩中、
文机に顔を伏せ溜め息をつく
本当はもうやめたい。
………だけど、姫の嗜みってどうやら大切らしいから頑張らなきゃ。
ーーー幸の為でもあるんだし。
(……気晴らしに、外の空気吸ってこよう……)
ふらつく足取りで、部屋を出た
戦国時代に来てまもない頃、幸のことを避けてよく一人で来ていた町のはずれにある草原ーーー
静かで落ち着ける場所。
(ちょっと遠くまで来ちゃったけど……いっか)
下駄で草を掻き分け進んでいると、
大きい体躯を弾ませた村正が走り寄ってきた。
「ふふ……あんたに初めて会ったのも、ここだったね」
ーーーあれから半年以上経ったーーー
気持ちも、状況もガラリと変化して
私は現代の生活を捨て
この時代を生きる
後悔は、無い
「………そうだ、実は穴場スポットあるんだよ。行ってみようか?」
そう村正に話し掛け、
奥の森林へと入っていった
野鳥のさえずりが心地よい。
木漏れ日が美しく差している
(そうそう、もう少し先まで行くと………)
生い茂る木々を抜けると、
辺り一面に咲き誇る花の群れが待ち構えていた。
色とりどりの花弁が、風に揺れている
「んー、いつ来ても良い景色だなぁー!」
両手を上げ伸びをしていると、
村正が何かに気付いたように一本の大木を目掛けて走っていった
「村正?」