第7章 『謳歌』 ※R‐18
持っていた巾着が指から滑り地面に落ちた
「嫁になればきっと面倒臭い不安とか無くなんじゃねーの。………俺、やっぱり女心とかよく分かんねぇからこんな事しか言えねーけど……………帰るな。ここに、いろ」
瞬間、
ワァッ、と歓声が沸き起こる
「なっ…………!?」
二人が言い争っているのを固唾を飲んで見守っていた群衆等が周りを取り囲み拍手や口笛があちこちから鳴り飛び交う
「なんだってこんなにいつの間に………っ」
羞恥心が最高潮に達し慌てふためいていると、
桜子が放心したまま立ちすくんでいるのに気付く
触れようとすると
フラリと身体が後ろ側に遠のき、
仰向けに倒れた
「……!」
予期せぬプロポーズで
それまで張り詰めていた感情の昂りがプツリと途切れ、私はどうやら一瞬失神してしまったらしい
どよめく町の人々と幸に助けられ、なんとか覚醒したのだが
後頭部を強打したせいでコブを作ってしまい最高に間抜けな有り様だった
それでも幸は「お前らしい」と笑ってくれる
私はその手を取り一生を捧げる事に決めた
「聞いたよ。喝采を浴びてきたんだって?」
「……うるせー」
城に帰ってきた親友を早々に冷やかしてみた。
人前で手なんか繋がない主義なはずが
あろうことか公開プロポーズを披露してしまった恥ずかしさから暫く立ち直れないみたいだけど、
隣にいる桜子さんは幸せそうにはにかんでるし
まぁ、一件落着といったところだろう。
「台風一過……………か」
やれやれ、と佐助は胸を撫で下ろし、恐らく興味無さげな反応をするであろう謙信に一応報告しようと本丸へ向かった
本当の嵐の前の静けさはまだ続いてるという事を知りもせずに