第2章 邂逅
「んあ? 誰もいないよ、兄さん」
勢いよく部屋に入ってきた黒スーツ姿の男性は額に手を当てそれっぽい動作を繰り返す。
何あれ。男の仕草か?
「あ、死んでる! ナムナム!!」
一点を見つめ、大変元気がよろしい声で近付いてきた。
あの人から狂気を感じる。さっさと出ていってくれないかな。
そう念じていると。また黒スーツが増えた。
まいったな。"家に帰るまでが暗殺"が私のポリシーなのに。
楽に仕事終われると思ったんだけどな。
「これ、"道化師"の仕業だね」
一目見て私の犯行だと言い切るとは。あの男は特に、警戒しないと。
先程到着した男の言葉に少し焦りつつ相手をよく観察すると、元気男と瓜二つ。
双子か?
よく見ると警戒対象のシャツは紫。恐らくあれで元気男と見分けられているのだろう。
ということは、あの二人の他にお仲間がいる可能性が高い。二人だけなら色を揃えて敵を撹乱するのがなにかと都合がいいはず。
それからスケベ爺を見ても取り乱さないあたり、爺の敵人なのは間違いないだろう。
「"道化師"ってさ、確か捕まえるって言ってたヤツだよね?」
まだいると思うんだけどなー? と部屋を散策する黄色。
あの子、見ていると面白い。
かなりマズイ状況なのだが、その場で頑張って笑いを堪えていると。
「あ」
あ。
紫と目が合った。
手、振っておこう。