第3章 憎悪
なんとか、撒いたか?
それからしばらくして、足を止めようかと思っていたが。
「お久しぶりでぇす」
「うぇっ」
禍々しい笑顔をこちらに向ける彼を見て、つい素っ頓狂な声が漏れる。
運が悪かった……いや、待ち伏せか。
「しっかり狙えよ」
「兄さんこそ、トチらないでよ」
彼らはバイクに乗り、私と並走している。
チョロ松さんがハンドルを握り、後部座席で私に銃を向けているのは紫だ。
バイクをどこから持ってきた。まさか盗んだバイクか? あんたら15歳ですか?
そんなことよりも。この人、正気か?
随分と移動してきたが未だ住宅地から抜け出せていない。
そんな中、コッキング済みの銃を構えている。
「お兄さん、本気?」
「本気、本気。心配しなくても、アンタに当てるから」
「その予言、たぶん外れますよ」
「一発で仕留めてやるよ」
怪しい笑顔から一転。無表情になったその顔から彼の本気が見受けられた。
けど。捕まる訳にはいかない。
捕縛されるなんて暗殺者にとって恥以外の何者でもない。
さらに同じ相手に捕まったとなったら、信用がた落ち。依頼がまったく来なくなる。
それだけは避けなければ。
けど、彼らから逃れるのは一筋縄ではいかない。こうしている間にも、先程の三人が何か策を講じているだろう。
ん? 三人?
123、45……。
チロリと横を見やりながら、頭の体操。
紫が、何? と、不機嫌そうに呟くが無視して思考回路を働かせる。
彼らは六人。先程三人を撒いた。今横にいるのは二人。
あと一人は、どこだ?