第3章 憎悪
「うぉおおおおおお!」
後方で何やら聞こえてくる。
視線だけそちらに向けると。
「え……はあ!?」
青がこちらに向かってきている。赤を、肩車しながら。
ちょ、ちょっと待ってよ。青のやつ筋肉馬鹿なの? 成人男性乗せながら全力疾走って!
怖いって!!!!
「あっはは。カラ松兄さんスッゲェー!」
黄色は目をキラキラさせてるし。
そんな無邪気な目と感想を言わないで。
「カラ松、あとちょっと。大人しく捕まれよ、"道化師"」
「嫌ですよ! てか、色々と怖いですってそれ!!」
「そんじゃあさ、降りてきて俺と鬼ごっこしようよ!」
「降りたと同時に終わりますから!」
ああ。無駄な応酬のせいで少し疲れてきた。
このままでは確実に捕まる。
早く打開策を見出ださなければ。
「往生際悪ぃな」
後ろでそう呟くけどさ、赤いお兄さん。誰だって追いかけられたら逃げますよ。
…………後ろ?
ある一つの策を思い付いたが、あまり気が乗らない。失敗すると、確実に捕まってしまう。
失敗しなくとも捕まるなら、賭けるしかないか。
深く息を吐き、しっかり前を見据える。
そして思いきり塀を蹴り上げ上体を反らす。
一瞬の浮遊感が、数十秒にも感じる。
が、それも終わりを告げる頃合い。
右手をつき、次に左手。今度は右足。
左足がついたとほぼ同時に方向転換しそのまま足を動かす。
「だっはー。スッゲェー!!」
「おいカラ松、戻れ!」
「あ、兄貴待て! 転ける!!」
二人分の悲鳴と一人の歓声を聞きながら、私はまた別の塀に移り変え引き離す。
上手くいった、けどまだ油断してはいけない。