第3章 憎悪
「確かにこちらが不利ですね」
ニッコリと微笑み右手の力を抜く。
それと同時に赤も銃を降ろす。
それを、狙ってたんだよ。
彼が降ろす腕を掴み、こちらに引き寄せ私と赤を入れ換える。入れ違い様、彼の背中に軽く肘を入れさらに体勢を崩させた、と思う。
なにせ、私は振り向きもせず走り出したのだから、確認の仕様がない。
赤以外の5人の弾を警戒し、私は電柱を蹴り塀の上に登る。狭い道路を通るよりも家の近くの方が、銃を使うのに躊躇するだろうから。
住宅街の真っ只中で撃つとは考えにくいけど、一応ね。
念のためワイヤーガンを持って来てはいたが、どうしても直線移動になるため撒くことは出来ないだろう。
軽快に塀の上を走り、時々向かい側の塀に跳び移る。
「ほんと、やってくれるよな"道化師"」
私の目論見通り、彼らは銃を直しこちらに向かってきた。ちなみに赤の人はかなりの殺気を放っている。
これ、捕まったら殺されるんじゃあ?
……ちょっと死ぬ気で頑張ろ。
さらに加速し、彼らを引き離す。
が。
「ねぇねぇ、降りてきてよ!!」
黄色が変わらず並走してくる。
またこの子か。他は引き離せたのに。
どうやって撒こうか……