第3章 憎悪
「コッキングしてないけど撃つ気あんの?」
コッキングとは、スライドという部分を引きいつでも撃てるようにする動作――ざっくりいうと撃つ前に行う動作のこと。
まぁ、懐からすぐ相手に向けたからそんなことする暇なかったんだけど。
「それはお互い様ですよ。お兄さんもしてないですよねー?」
そう、彼もそんな動作はしていない。
けれど、撃つ気はあるんだろうな。
私と一緒で。
「いやー、ここまで気が合うとは思わなかったよ」
「僕もびっくりですよ。まさか、この状況下で互いあれを狙うなんてね」
私も赤も、笑顔を絶やさず会話する。
ほんと、考えることが一緒すぎて逆に気持ち悪い。
ちなみにあれとは――ダブルアクション。
先程のコッキングなしで、銃を撃つことである。ただ、コッキング済みと違うのは引き金の重さと引く長さ。
コッキングしていると少しの力で引き金を引けるが、していないと引く力、距離がかなり必要である。
加えて、命中精度も落ちてしまう。
不便に思えるがその分、暴発防止や威嚇射撃、相手を油断させるといったメリットもある。
私は――私達はその中で互いに"油断"を選択したのだった。
「でも、残念。君の負けだ」
そこかしこで冷たい音が響き渡る。音の出所を頭で描き、現在の状況を確認。はい、囲まれて銃を向けられてるね。
「こっちは六人なんだよ」
勝ち誇った笑みの赤。負けじとこちらも微笑み返す。
さて、どう切り抜けようか。
「無駄な抵抗は止めてさ、降参しなよ」
私の左斜め後ろでそう発する彼は、声からして恐らくチョロ松さんだろう。
「さあ、武器を捨てその身を俺たちに預けるんだ boy」
これはもう完全に、青だ。こんな話し方のやつが二人もいてたまるか。
でも、君のお陰で良いこと思いついたよ。
ありがとう、blue guy。