第3章 憎悪
元気に帰宅すれば終わり、のはずだった。
「あっ」
「えっ」
着地したと同時に自分の運の悪さをすこぶる恨む。そこには同じ顔が六つ。もはや恐怖映像。
「こんばんは、月が綺麗ですね」
「僕、それ言われるのは嫌いなんだよね。ちなみに今日は曇ってるよ」
「間違えました。今日は雨が降るみたいですよ」
「あのね、明日の朝から降るらしいよ!」
「そうだったっけ。なら、早く帰った方がいいですね」
「今、帰ってる途中なんだけど」
「それは、お疲れ様です。あ、もしかしてこれから晩ご飯ですかね?」
「フッ。ディナーはもう、済ませてある」
「あー、痛い。痛い痛い」
「俺も痛い痛い。絶対あばらヒビ入ってるてぇ!!」
……………………。
「ちょっっっっっと待てお前らぁあああああ!!」
緑の怒声にあとの五つがビクつく。
しまった。逃げるタイミングを逃したかも。
「何ですか? ご近所迷惑ですよ」
「いやいや、私有地突っ切って来た君に言われたくないんだけど!! つーか、何で談笑してんだよ!? 全く噛み合ってないけどさ! この子捕まえなきゃならねぇんだろ!?」
「だってさー、俺らさっきまで仕事してたじゃん。正直しんどいんだけどー」