第3章 憎悪
「あなたが悪いのよ」
何が起こったかわからない、という顔の彼女にクライアントの声でいかにもな台詞をぶつける。
「あなたが、私の大切なものにまで手を出すから!!」
何度も何度も。彼女の腹目掛けて。
「私の! 幸せまで!! あの人まで!!!」
彼女がよろめき、背中から倒れても。
手を、止めない。
「奪うから!!!」
一度腕の力を抜き、それを一瞥する。
手に持っていたものを離し、私はその場を後にした。
何度か道を曲がり、適当なゴミ捨て場を見つけるとその陰に隠れ、彼女の皮を剥いだ。続いて身に着けていたものを順に脱ぐ。
彼女から借りていた服の下は、少し大きめのワイシャツと黒のパンツ。今回はさらしを巻いているため、一見すると"仕事帰りの美男子"にしか見えないはずだ。
大きめのワイシャツは身体のラインと、護身用に忍ばせている銃を隠すため。
前回のような建物への潜入以外では基本的に銃を身に着けている。
備えあれば憂いなし。
彼女の抜け殻は適当なポケットに詰め、服はゴミ捨て場にポイ。
これで七割はミッションクリア。
あとは私有地にお邪魔させてもらい、元気に一本先の道へと抜ければ、おしまい!