第3章 憎悪
人通りが少なく、静寂が包む中。私は風に煽られながらその時を待っていた。
寒い。それはもう、毛布に包まってストーブの前に行きたい程。
一昨日まで熱があった私には夜風は辛い。
熱があっても店はいつも通り営業、そして今回の計画の準備。さらにはあの六人のマフィアのことも調べ上げて。
さすがにハードワーク過ぎた、かな。
あれから三日が過ぎ、今日が決行の日。
時刻は午後10時27分。あと3分ほどで、始まると同時に終わる。
私はクライアントから服を借り、全ての準備を済ませたあと彼女にイオリと二人で会う約束をさせた。
実際に会うのは私だが、"私"ではない。
「犬山さん」
不意に声をかけられ、そちらを向く。
そこには栗色の長い髪を毛先だけクルクルと巻いた女性が、体重を右足に乗せて立っていた。
なるほど、イジメっ子オーラがプンプンするわ。呼び出しの時間は守るんかい。変なところで律儀なおねえさまだこと。
さらに香水の臭いがたまらん。吐きそう。
「このあたしを呼び出すなんて、あんたも偉くなったものね?」
鼻で笑う彼女のその腹目掛けて、突進する。
「なっ……え?」
「あなたが悪いのよ」