第3章 憎悪
「なるほど、お話はだいたいわかりました」
部屋に入ってからずっと、例の彼女の話に耳を傾けていた。
今回のクライアントは犬山 音子(ねこ)さん。28歳。平凡なOLの彼女の悩みは、同僚の値山 イオリのこと。
要点だけまとめると、
どんなに仕事で結果を出しても全てイオリに手柄を横取りされ、さらには彼女の仕事までやらされるという。
それでも音子さんは耐えていたらしいが、付き合っていた男性までも取られてしまい、もう限界なのだとか。
殺してやりたい。
けれど、自分に容疑がかかるのは避けたい。
なんとまぁ……
同情はするけど、彼女もなかなかの自己中心的だ。
自分の身が一番可愛い。まさにこの言葉に尽きる。
「もう、あの女に取られるのは嫌なんです! だから……だから!!」
涙を流しながらそう訴える彼女。その姿だけを見れば悲劇のヒロインなのだが。
「音子さん。どうしてもその方を殺めたいのですか?」
私の声にピクリと反応し、真っ直ぐ捉える。
「因果応報。人を呪わば穴二つ。この言葉を知っていますか?」