第2章 邂逅
☆☆☆
「まさか、あの状況で逃げるなんて」
突如乱入してきたカラスを追い払い、"道化師"の後を追う中チョロ松が呟く。
「しかし、何故トランクのカギが空いていたんだ?」
「確か十四松兄さん昨日トランク開けてなかったっけ?」
「ごめんねっ!!」
十四松の奴……開けたら閉めるってお兄ちゃんでも出来るっていうのに。
けど、十四松のお陰で俄然やる気になったよ。
「あんな身体能力見せられたら、絶対欲しくなるんだよなぁ」
座席と天井の、あの僅かな隙間を宙返りで潜る。それも本調子ではないのに。
なかなか面白いな、"嘲笑う道化師"ってのは。
「トッティ、反応は?」
「動かないから、たぶんダメだね」
念のためあいつに渡したペットボトルに、トド松が発信器をつけたらしい、けど。
うーん、やっぱりダメか。
そりゃ律儀に持って帰る訳ねぇよな。
ちなみに本人には隙がなくつけれなかったんだと。
「十四松、匂いはどうだ?」
頼みの綱、十四松の鼻に賭けるしかない。こいつの嗅覚は犬並みだ。そうそう逃げられない。なにせ書類仕事から抜け出す度に捕まる俺のお墨付きだ。
「発見伝!!!!」
「十四松ナイス」
しゃがんでいる十四松の頭を撫でる一松。
これはかなり珍しい。一松が人の頭を撫でるなんて。かなり"道化師"に怒ってるな。
さしあたり、"自分が隣にいたのに逃げられた"ことに苛立ってるんだろう。
あいつ妙に真面目だし。
「ひひっ、ピエロの化粧を落としてやろうか」
これは真面目にダメなやつだ。一松の奴、悪魔の顔しながらホルスター ――拳銃を携帯出来るケース――を触りまくってるし。
「一松、殺すなよ~」
そう釘を指し、本人も頷いてはいるが。
イマイチ信用出来ない。
目、イっちゃってるし。
お兄ちゃんは弟が真面目に怖いわ。