第2章 邂逅
「取っ捕まえたのはさ、君を引き入れたいからなんだよね」
「本気で言ってます?」
何とまぁ、呆れた理由だ。聞き返しても表情を一切変えないところを見る限り、嘘ではないのだろう。
「確かに、僕もそちら側の人間だけど、皆さんの足手まといになると、思いますよ」
「…あれま、過小評価だね。全然んなことないと思うけど」
終始笑顔を絶やさない赤だが、ほんのり殺気を感じる。それはまるで"とっとと首を縦に振れ"、と言うように。
……誰が応じるか。もうそろそろ迎えが来ると思うんだけど。少し時間稼ぎをするか。
「根本的な問題ですよ。元来、暗殺とは、一対一の時にその真価を発揮する。多人数相手だと、ほぼ一般人並みの価値しか、ありません」
勘違いしないでよ、お兄さん。
口には出さないが笑顔で訴える。
それが伝わったのか赤の眉が少し動いたのを見逃さなかった。
案外、安い挑発に乗るんだな。
「ま、普通の暗殺者ならそーなんだろうけど。"嘲笑う道化師"には当てはまらねぇよな」
そんなのわかってるっつーの。
何となく、笑顔の裏で彼の言いたいことがわかる。完璧にイラついてるな。
「おにーさんは大抵ナイフを使うみたいだけど、銃も扱えるんだろ? その上身軽で変装のプロときたもんだ。十分役立つと思うけどね」
これが一般人並みか?
貼り付けたような笑みが少し剥がれているように感じた。そろそろ相手がキレそう。
他の色達が固唾を飲む音が聞こえてきそう。
なんてね。
この赤い人は、怒らせるとダメな人みたいだけど。
それでも。
「それでも、僕はお断りします」
「……本気で言ってんの」
笑みの仮面がボロボロ崩れ、とうとう本性を現した。
そうそう、そうこなくっちゃ。
もう少し、お話ししようよ。