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漂流者案件承ります。〜女主人の細腕宿飯日記〜

第1章 壱 〜流転〜


ゆらゆらと浮かぶ夢と現がないまぜの中に、人の声を聞いた。


男の人の声…そして此方では決して聞けないであろう…

「日本…語…?」


うっすらと目を開けると、贅を凝らした見知らぬ天井が映る。
そして、笑みを讃えながら手を握る男が一人


褐色の肌、翡翠の瞳、濃い金色の髪、端正な容姿。中東によく似た衣服を着ている。

「お目覚めかな?お嬢さん。貴女はどちら…かは聞かなくてもいいみたいですね。」


どちら?どちらとは何の事だろう。国籍の事か、文明に関する事柄なのか…それともまるで違う事柄なのか
低血圧な為に働かない頭。とりあえずヨロヨロと上半身を起こし、男性と対峙する。


「この様な格好で申し訳ありません…あの、何か分からないうちに此処に来てしまったんですが…水夫の方に親切にして頂きまして…」
お礼を…と言いかけたところで、笑い出す男性。


「ははははは!!…ああ、すみません。…ふふっ…彼にはちゃんと報酬は支払いましたし、お礼はいらないと思いますよ。」

「報酬?」

「グ=ビンネン商業ギルド連合に属する者は、漂流者…『ドリフターズ』を見つけたら連絡する事。
そして、ドリフを届け出たら者に相応の報酬を支払う。」


「ーーーーなるほど…ならやはり、お礼を言いたいのです。」

なんとなく男の話が読めてきた。自分が何故ああまで親切にされたのか…自分は『この上なく高価な商品』だったからだ。
まったくの善意では無いが、助けて貰った事には変わりないのだから。


男はさも不思議だと言わんばかりな、複雑な表情を浮かべ困った様に苦笑した。

「義理堅い事で…そういえば自己紹介がまだでしたね。私はシャイロック商会及びシャイロック銀行大番頭、バイゼルマシン・シャイロック8世と申します。」


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